ISBN:416310660X 単行本 パトリック・ジュースキント 文藝春秋 1988/12 ¥1,950
舞台は18世紀のフランス。町は汚穢(おわい)にまみれ、至るところに悪臭が立ちこめていた。そこに、まったく体臭のない男がいた。男にないのは体臭だけでない。恐ろしく鋭い嗅覚と、においへの異様なまでの執着以外に、男には何もなかった。
物語は至高の香りを求めて、めくるめくにおいの饗宴が繰り広げられる。ドアノブの…


一気に読みました。映画は駄作だという巷間のうわさは本当だろうな、というのがまず思ったこと。もし映像化するとしても、「パプリカ」チームによるアニメ化とかじゃないと難しいでしょう、これは。

ふたつめは、というか読んでいる間ずっと、通奏低音のように感じていたのは、池内紀のこなれた翻訳調! というとパラドックスのようですが、実に的確に、そして自然に外国語が日本語に置き換えられていて、いい意味で「これ、原文だとどうなってるんだろう」と思わされる手練れのワザ。悪い意味で「これ、原文だとどうなってるんだろう(そっち当たらないとわからないかも…)」と思わせる拙い翻訳にままお目にかかる昨今では貴重です。

みっつめは、文庫版あとがきを読んで感じた物寂しさ。池内氏が自身の老いをさりげなく認めているのだけど、それがわたしたちにとっての大きな文化的損失であることがずしんと感じられてしまう。それがとても寂しい。

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