シドニー! (ワラビー熱血篇)
2006年11月1日 読書 コメント (2)
ISBN:4167502062 文庫 村上 春樹 文芸春秋 ¥470
そしてこれも一般論になってしまうが、多くの場合、孤独は人の心を蝕んでいく。僕は作家だから、孤独というものの持つ力強く輝かしい価値と、裏にある危険な毒性をよく承知している。そこに約束されている価値を手に入れるためには、僕らはその毒とともに生きていく術を覚えなくてはならない。緊張と集中力が必要とされる。少しでも気を抜くと、その毒はすぐに僕らに噛みつく。狡猾な蛇のように。
それでもなお、彼女は自由であることを幸福だと感じている。彼女は自分が、自分の選んだ人生を生きていることを、何よりも素晴らしいことだと思っている。それはひとつの達成であると信じている。あと残されているのは、勝つことだけだ。
そう、勝つことだけなのだ。
また一般論。勝ち続けているとき、勝つことはとても簡単であるように思える。手を伸ばしさえすれば、勝利はいつもそこにある。しかしいったん勝てなくなってしまうと、身をそいで骨を削っても、どれだけ長く手を伸ばしても、勝利は遥か遠くにしかない。
「指導者がいないことのいちばんつらい点は、自信をなくすことです」と彼女は静かな声で言う。「自分が今どこにいるのか、それが正しい場所なのか、そうではないのか、判断をいつも自分で下さなくてはならないということです」
もちろん、ときとして、彼女は途方に暮れる。
コメント
仕事のためにお読みになっているようですが、P.O.さんと村上春樹ってあまり結びつきません。個人的にはお好きなのでしょうか。